代謝学① 人間がエネルギー(ATP)を作るメカニズム

人間がエネルギー(ATP)を作るメカニズム。

 

●動物のエネルギー生産

 炭水化物+酸素→二酸化炭素+水

 

 上記の反応が起きることでエネルギー(ATP)を作りますが、

 この反応には膨大な量の化学反応が関与。

 それらを理解することで、エネルギーの取り出し方・食事の大切さ等を理解可能。

 以下ではこれらについて簡潔に説明し、その他の記事で詳細に説明します。

 

●細胞の発電所ミトコンドリア

 人間のエネルギーは細胞内のミトコンドリアという場所で作られる(図1)。

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図1.ミトコンドリア模式図

 外側に膜をミトコンドリア外膜、

 内側の膜をミトコンドリア内膜、

 内膜で囲まれた部分をミトコンドリアマトリックス

 外膜と内膜の間を膜間腔という。

 ミトコンドリアマトリックス膜間腔ミトコンドリアの機能を理解する上で重要。

 F0型F1型ATPアーゼプロトンポンプもATP合成酵素と呼ばれ重要。 

 

●生体のエネルギー通貨ATP

 ATP(アデノシン3リン酸)は生体のエネルギー通貨といわれる。

 アデノシンはアデニンという核酸の一つに炭素原子5個のリボースが結合したもの。

 ATPはそれにに3つのリン酸基が結合したもの(図2)。

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図2.ATPの構造

 ATPのリン酸基を一つ取り除き、ADP(アデノシン2リン酸)にする際にエネルギーが得られる。(以下熱力学的考察。省略可。)

           ATP+H₂O→ADP+H₃PO₄+H⁺   ΔG⁰=ー30.5kJmol⁻¹

 

 ※一見、ATPがエネルギーの小さいADPに変化した際に余剰分のエネルギーを放出

  しているように見えるが、実際はそうではない。

  水:G⁰=-237 kJmol⁻¹、リン酸:G⁰=-1119 kJmol⁻¹より、

  リン酸がATPから脱離し、水に溶解する際に大量のエネルギーが放出され、

  その大部分がADPの合成に、その一部がエネルギーとして使われる

 

●電子伝達系

 では、どのようなメカニズムでATPは作られて、どのような化学反応でエネルギーを獲得しているのか。

 

 図3はATP合成のメカニズム(電子伝達系といわれる)です。

 簡略的に説明しますと、(後々の記事で①ー⑤は詳しく説明)

 ①I、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳは複合タンパク質で、プロトンH⁺や電子e⁻を運ぶ。

 ②膜間腔にプロトンH⁺がたくさん輸送される。

 ③電子はプロトンと呼吸で得た酸素と反応し水として消費される。

 ④膜間腔のプロトンが増えるとプロトン濃度勾配が内膜とマトリックスの間で発生。

  (約1.1Vもの電圧→プロトン移動の駆動力)

 ⑤プロトンがその駆動力を受けATP合成酵素付近(図4)を通過。

  酵素の一部がモーターのように回転し、その運動エネルギーでADPをATPに変換。

 

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図3.ATP生産メカニズム

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図4.ATP合成酵素模式図

 

 上記は非常に概要的な説明となっています。

 ただしATPがどのように作られるか、概略的な理解としては十分です。

 ただ、食事等と紐づけはできておりません。

 これから①ー⑤を本質からそれず簡単に説明していきます。